門松はいつまで飾る？地域で異なる「松の内」の期間と正しい処分方法

2025年12月19日

お正月を迎える準備として、玄関先に門松やしめ縄を飾るご家庭も多いことでしょう。新しい年の神様をお迎えするための大切な準備ですが、ふと「これっていつ片付ければいいの？」「ご近所さんがまだ飾っているけれど、うちはもうしまっていいの？」と迷ってしまった経験はありませんか？

実は、門松を飾っておく期間（松の内）は、関東と関西で大きく異なります。また、昨今は住宅事情により「どんど焼き」に持っていけない場合の処分方法に悩む方も増えています。間違ったタイミングで片付けてしまったり、処分の仕方に迷ったりしないよう、正しい知識を持っておきたいものです。

この記事では、地域ごとの門松を飾る期間の違いから、飾り始めるのに適した日、そして自宅で処分する際の具体的な手順までを詳しく解説します。地域の風習や現代のライフスタイルに合わせた正しいマナーを知り、気持ちよく新年を過ごしましょう。

この記事でわかること

関東と関西で異なる「松の内」の正確な期間と理由
門松を飾り始めるべき「縁起の良い日」と避けるべき日
どんど焼きに行けない場合の自宅での正しい処分・清め方
しめ縄や鏡餅など他の正月飾りの片付けタイミング

門松はいつまで飾る？地域で異なる「松の内」の期間

門松を飾っておく期間のことを「松の内（まつのうち）」と呼びます。この期間は、年神様（としがみさま）が家に滞在している期間とされており、門松はその目印としての役割を果たしています。しかし、この松の内が終わる日、つまり門松を片付ける日は、日本全国で統一されているわけではありません。主に関東地方と関西地方で大きな違いがあり、引越しなどで住む地域が変わった方が戸惑うポイントの一つでもあります。

ご自身の住んでいる地域がどの期間に当てはまるのか、あるいは実家や親戚の地域ではどうなのか、具体的な日付とその背景を確認しておきましょう。地域の慣習に合わせることは、円滑なご近所付き合いのためにも重要です。

【関東・東北・九州】1月7日までが一般的

関東地方（東京・神奈川・千葉・埼玉など）を中心に、東北地方や九州地方の多くの地域では、1月7日までを松の内としています。この場合、門松やしめ縄などの正月飾りは、1月7日の朝、もしくは6日の夜から7日の早朝にかけて片付けるのが一般的です。7日の朝には「七草粥」を食べて無病息災を祈りますが、これに合わせて正月行事に一区切りをつける形となります。

具体的には、1月6日の夕方に「そろそろお正月も終わりだな」と感じながら飾りを外し、7日の朝には七草粥を食べる準備とともに完全に片付けてしまうという家庭が多いでしょう。あるいは、7日までは神様にいていただきたいと考え、7日の明るいうちに外して片付けるケースもあります。どちらにせよ、8日以降も玄関に門松が出ていると「いつまでも正月気分でいる家」と思われかねないため、関東圏では7日中には必ず撤去するようにします。

もともとは全国的に1月15日までが松の内でしたが、江戸時代に幕府から「火災予防のために正月飾りを早く片付けるように」というお触れが出たことで、江戸を中心に期間が短縮されたという歴史的背景があります。これが関東地方に定着し、現在に至っているのです。

【関西（京都・大阪・兵庫）】1月15日まで飾る地域が多い

一方、関西地方（京都・大阪・兵庫・奈良など）では、昔ながらの伝統を守り、1月15日までを松の内とする地域が多く見られます。これを「小正月（こしょうがつ）」と言い、15日までたっぷりと正月気分を味わい、年神様をおもてなしする風習が残っています。

関西の街中を歩いていると、1月10日を過ぎても立派な門松が飾られているのをよく見かけますが、これは決して片付け忘れているわけではありません。むしろ、15日に行われる神社の「どんど焼き（左義長）」に合わせて片付けるのが正式な作法とされています。具体的には、1月14日の夜や15日の朝に飾りを外し、そのまま近所の神社へ持って行って焚き上げてもらうという流れがスムーズです。

ただし、最近では関西であっても、全国展開している商業施設や、関東からの転入者が多いマンションなどでは、1月7日頃に片付けてしまうケースも増えています。周りの家の様子を見ながら判断するのが無難ですが、基本的には「関西は15日まで」と覚えておけば間違いありません。特に伝統を重んじる京都の旧家や老舗のお店などでは、しっかりと15日まで飾る傾向が強いです。

地域	松の内の期間（片付ける日）	備考
関東・東北・九州	1月1日〜1月7日	7日の朝、七草粥を食べる頃までに片付ける
関西（京阪神）	1月1日〜1月15日	小正月（15日）まで飾り、どんど焼きへ出す
沖縄	旧正月（旧暦の1月1日）	新暦ではなく旧暦でお祝いする風習が残る

この表のように地域差は明確ですが、あくまで目安です。ご自身の住んでいる地域の町内会や自治会の掲示板、あるいは近所の神社の行事予定などを確認すると、より確実な日程がわかります。

その他の一部の地域や独自の風習がある場合

関東と関西の文化が入り混じる地域や、独自の風習を持つエリアもあります。例えば、名古屋（東海地方）では、基本的には関東と同じく1月7日までとする家庭が多いものの、一部では関西の影響を受けて15日までとする場合もあり、混在しているのが特徴です。また、三重県などでは「二十日正月」と言って、1月20日まで飾る風習が残っている地域もあります。

さらに、近年増えているのが「マンションやアパートの管理規約」によるルールです。共有部分である廊下や玄関ドアの外側に私物を置くことを禁止している物件では、そもそも大きな門松を飾れません。そのため、ドアの内側（室内）に小さなアレンジ門松を飾るケースも増えています。室内飾りの場合は、厳密な期間に縛られる必要はありませんが、季節感を大切にするなら地域の松の内に合わせて片付けるのがスマートです。

「うちの地域はどうなんだろう？」と迷ったときは、近所の年長者に尋ねるか、地元の神社のスケジュールを確認してみましょう。「どんど焼き」や「お焚き上げ」の日程がいつに設定されているかを見れば、その地域でいつまでに飾りを外すべきかの答えがおのずと分かります。

門松を飾り始める正しい時期はいつ？避けるべき日は？

片付ける時期だけでなく、飾り始める時期にも伝統的なルールやマナーがあります。「早ければ早いほど良い」というわけではなく、また「年末ギリギリになっても大丈夫」というものでもありません。年神様を失礼のないようにお迎えするために、最適な日取りと、逆に避けるべきタブーの日を知っておくことが大切です。

ここでは、一般的に推奨されている飾り始めの時期と、なぜ特定の日付を避けるべきなのか、その理由を詳しく見ていきましょう。これを知っておくと、年末の忙しい時期でも計画的に準備を進めることができます。

12月13日の「正月事始め」から28日までに飾るのが基本

伝統的な暦では、12月13日を「正月事始め（しょうがつことはじめ）」と呼び、この日からお正月の準備を始めても良いとされています。神社などではこの日から準備が進められますが、一般家庭で12月中旬から門松を飾ると、クリスマスリースなどと時期が被ってしまうため、現代の住宅事情にはそぐわないことも多いでしょう。

そこで、現代のライフスタイルにおいて最も一般的で推奨されるのは、クリスマスの片付けが終わった後の12月26日から、12月28日までの間に飾り始めることです。特に、末広がりの「八」がつく12月28日は、お正月飾りを飾るのに最も縁起が良い日とされています。この日に合わせて準備を完了させれば、心に余裕を持って新年を迎えることができるでしょう。

例えば、12月25日の夜または26日の朝にクリスマスツリーやリースを片付け、その流れで玄関の掃除を行い、26日以降に門松を設置するというスケジュールを組むのがスムーズです。「クリスマスが終わったらすぐにお正月モード」と切り替えることで、家の中の気も引き締まります。

「一夜飾り（31日）」と「苦松（29日）」は避けるべき理由

一方で、飾り付けをしてはいけないとされる日が2日間あります。それが12月29日と12月31日です。これらの日に飾ることは縁起が悪いとされ、古くから忌み嫌われてきました。うっかりこの日に飾ってしまわないよう、注意が必要です。

まず、12月29日は「九」という数字が「苦」に通じることから、「苦松（くまつ）」「苦待つ」と読まれ、「苦しみが待っている」「二重苦」などの悪い語呂合わせになります。せっかくのおめでたいお正月飾りが、苦しみを連想させるものになってしまっては本末転倒です。ただし、地域によっては「福（29）」と読んで縁起が良いとする場合もありますが、一般的には避けた方が無難でしょう。

次に、12月31日に飾ることは「一夜飾り（いちやかざり）」と呼ばれます。お正月にお迎えする年神様に対して、前日に慌てて準備をしたような突貫工事は失礼にあたるという考え方です。また、お葬式の飾り付けが一夜限りであることにも通じるため、縁起が悪いとされています。神様をお迎えするには、前もって清められた状態で準備を整え、静かに当日を待つという姿勢が大切です。

日付	飾り付けの可否	理由・意味
12月13日〜25日	◯（可能）	正月事始め以降ならOKだが、クリスマスと被る
12月26日〜27日	◎（おすすめ）	クリスマス後でスムーズに準備ができる
12月28日	◎（最良）	末広がりの「八」で最も縁起が良い日
12月29日	✕（避ける）	「苦松（苦待つ）」「二重苦」で縁起が悪い
12月30日	◯（可能）	キリの良い数字だが、旧暦では大晦日の場合も
12月31日	✕（避ける）	「一夜飾り」となり、神様に失礼にあたる

もし28日までに準備が間に合わなかった場合は、29日を避けて30日に飾るのが最後のチャンスです。31日になってしまった場合は、無理に飾らずに、玄関を綺麗に掃除するだけにしておくか、心の中で神様にお詫びをしてから静かに飾るなど、気持ちの持ちようを大切にしましょう。

門松の正しい片付け方と自宅での処分方法

松の内が明けて門松を片付ける際、どのように処分すれば良いのでしょうか。神様をお迎えした依り代（よりしろ）ですから、一般のゴミと一緒に無造作に捨てるのは気が引けるものです。感謝の気持ちを込めて手放すための、正しい方法と手順をご紹介します。

最も理想的なのは神社でのお焚き上げですが、最近は環境配慮や防災の観点から、野焼き（どんど焼き）を行わない地域も増えています。そのような場合に、自宅でどのように処分すればバチが当たらないか、具体的な作法を知っておきましょう。

神社や地域の「どんど焼き（左義長）」で焼納する

最も正式で丁寧な処分方法は、地域の神社やお寺で行われる「どんど焼き（左義長・お焚き上げ）」に持っていくことです。これは、小正月の1月15日（地域によっては7日や成人の日など）に、持ち寄られた正月飾りや古いお札を焚き上げ、その火にあたって無病息災を願う伝統行事です。

手順としては、まず門松からプラスチックや針金などの燃えない素材を取り外します。これは環境への配慮として非常に重要です。その後、指定された日時・場所に持参し、所定の場所に納めます。お焚き上げの炎とともに年神様が空へ帰っていくと信じられているため、感謝の気持ちを込めて手を合わせましょう。もし行事の当日に参加できない場合でも、多くの神社では「古札納め所（こさつおさめじょ）」という専用の回収場所を設けており、松の内の期間中であれば受け入れてくれるところが多いです。

ただし、近年ではダイオキシン問題や近隣への配慮から、自宅の庭での焼却はもちろん、神社での焼納も規模を縮小したり、受付品目を厳しく制限したりしている場合があります。プラスチック製の飾りが多いモダンな門松や、橙（だいだい）などの生ものは受け付けてもらえないこともあるため、事前に神社の掲示板やホームページでルールを確認することが不可欠です。

自宅で処分する場合の手順（塩で清める方法）

どんど焼きに行けない場合や、近くに受け入れている神社がない場合は、自宅で処分しても全く問題ありません。大切なのは「ゴミとして捨てる」のではなく、「清めてから手放す」という心の持ち方です。そのままゴミ箱に放り込むのではなく、以下の手順でお清めを行いましょう。

まず、新聞紙や白い半紙を広げ、その上に解体した門松を置きます。そして、お清めの塩（食卓塩ではなく、できれば粗塩）を「左・右・左」と三回かけます。このとき、「一年間ありがとうございました」「神様、ありがとうございました」と感謝の言葉を心の中で、あるいは声に出して唱えましょう。このひと手間をかけることで、単なる「モノ」から、役割を終えた「飾り」へと清められます。

清めた後は、広げた新聞紙や半紙で門松を丁寧に包みます。大きな門松の場合は、枝を剪定バサミなどで短く切ってから包むとコンパクトになります。このように包むことで、神聖なものを不浄なゴミと直接混ぜないという結界の意味合いも持たせることができます。心情的にも、そのまま捨てるよりずっと晴れやかな気持ちで片付けることができるでしょう。

燃えるゴミとして出す際の分別と注意点

お清めが終わったら、最終的には自治体のゴミ収集に出すことになりますが、ここでも分別ルールを徹底する必要があります。門松は自然素材（松・竹・藁など）だけでなく、装飾用の針金、プラスチック製の扇、紙製の水引など、様々な素材が組み合わされています。

具体的には、以下のように分別します。
・松、竹、梅、藁、紙類：燃えるゴミ（可燃ゴミ）
・針金、金属、プラスチック類：燃えないゴミ（不燃ゴミ）または資源ゴミ

特に注意したいのが、大きな門松の「竹」の部分です。太い竹はそのままではゴミ袋に入らないため、指定袋に入るサイズまで切断する必要があります。もし切断が難しいほど大きなものの場合は、「粗大ゴミ」としての扱いになる自治体もあります。無理に袋に詰め込んで破れてしまっては、収集の方や近隣に迷惑をかけることになります。必ずお住まいの自治体のゴミ出しカレンダーや分別ガイドブックを確認し、「正月飾りの出し方」などの特記事項がないかチェックしておきましょう。

また、出すときは他の生ゴミなどと同じ袋に混ぜず、門松やお飾りだけで一つの袋にするのが理想的です。それが難しい場合でも、一番上に置くなどして、汚れたものと直接触れないように配慮すると、最後まで敬意を払った処分ができます。

門松以外の正月飾り（しめ縄・鏡餅）はいつまで？

お正月の飾りは門松だけではありません。玄関のしめ縄（しめ飾り）や、床の間・リビングに飾る鏡餅についても、飾る期間や片付けるタイミングが決まっています。これらは門松と連動している部分もあれば、少し異なるスケジュールで動くものもあります。

「門松は片付けたけど、鏡餅はいつ食べるの？」「しめ縄はずっとつけておくもの？」といった疑問を解消するために、それぞれの飾りのスケジュール感を整理しておきましょう。特に鏡餅は「食べる」までが行事ですので、そのタイミングを逃さないことが重要です。

しめ縄・しめ飾りの飾る期間と処分タイミング

しめ縄・しめ飾りを飾る期間は、基本的に門松と同じ「松の内」の期間中です。つまり、関東なら1月7日まで、関西なら1月15日までとなります。しめ縄は、家の中に不浄なものが入ってこないようにするための結界であり、神様をお迎えする神聖な場所であることを示すものです。

片付けのタイミングも門松と同時で構いません。7日（または15日）に門松と一緒に外し、どんど焼きに持っていくか、自宅でお清めをして処分します。ただし、三重県の伊勢志摩地方など一部の地域では「笑門（しょうもん）」などの木札がついたしめ縄を一年中玄関に飾っておくという独特の風習があります。旅行先などで見かけて「時期外れでは？」と思うかもしれませんが、それはその土地の文化ですので、ご自身の住む地域の慣習に従えば問題ありません。

鏡餅は「鏡開き」の日まで飾ってから食べる

鏡餅の片付け方は、門松やしめ縄とは大きく異なります。鏡餅は年神様が宿る依り代そのものであり、単に片付けて捨てるのではなく、「鏡開き（かがみびらき）」の日に割って食べることで、神様の力を体内に取り込み、一年の無病息災を祈る行事です。

鏡開きの日程も地域によって異なりますが、一般的には以下の通りです。
・関東など多くの地域：1月11日
・関西の一部地域：1月15日または 1月20日

ここで注意したいのは、「松の内が終わってから鏡開きをする」という順番です。かつては松の内が15日まで、鏡開きが20日でしたが、徳川家光の忌日（20日）を避けるために鏡開きが11日に早まりました。その際、関東では松の内も合わせて7日に短縮されましたが、関西では松の内は15日のまま残ったため、鏡開きの日付と逆転現象や近接が起きている地域もあります。

現在はカレンダー上の「鏡開きの日（1月11日）」に合わせて行う家庭が多いですが、基本的には「松の内が明けて、年神様をお送りした後に、お供え物をいただく」という流れを意識すると良いでしょう。下げたお餅はお汁粉や雑煮、揚げ餅にして美味しくいただきましょう。包丁で「切る」のは切腹を連想させるため避け、木槌などで「叩いて開く」のがマナーです。

喪中の場合、門松や正月飾りはどうすればいいですか？: 喪中の期間は、基本的にお祝い事や派手な装飾を控えるのがマナーです。そのため、門松、しめ縄、鏡餅などの正月飾りは一切飾らないのが一般的です。ただし、故人を偲びつつ静かに新年を迎えることは問題ありません。おせち料理なども、紅白のかまぼこや鯛などのお祝い色の強いものを避ければ食べても良いとされています。迷う場合は、家族で相談して静かに過ごすのが良いでしょう。
プラスチック製のモダンな門松は、翌年も使い回していいですか？: 本来、お正月飾りは「毎年新しいものを用意して神様をお迎えする」のが伝統的な考え方です。そのため、使い回しは避けるべきとされています。しかし、近年販売されているインテリア性の高いプラスチック製やガラス製の置物としての門松は、季節のインテリア雑貨として毎年飾るご家庭も増えています。伝統行事としての意味合いを重視するなら毎年新調し、インテリアとして楽しむなら大切に保管して使い回すなど、ご自身のスタンスに合わせて決めると良いでしょう。
1月15日のどんど焼きを逃してしまいました。いつまでなら処分しても大丈夫ですか？: どんど焼きを逃してしまった場合でも、焦る必要はありません。1月中の都合の良い日に、記事内で紹介した「塩で清めてから家庭ゴミに出す」方法で処分すれば大丈夫です。また、大きな神社であれば、1月中や節分（2月3日頃）まで古札納所を開放しているところもあります。無理に保管し続けるよりも、感謝の気持ちを持って早めに手放し、お部屋をすっきりさせることをおすすめします。